ONE PURPOSE 2023夏号 「研究の最前線」

ONE PURPOSE 2023夏号 「研究の最前線」

※アイキャッチ画像はillust-boxのフリー画像

シンギュラリティ(技術的特異点)という言葉があります。シンギュラリティって『人工知能が人間の知能を超える日』のことです。シンギュラリティは2045年前後に到来すると言われていて、シンギュラリティが到来するといわれる2045年に起こり得る様々な問題を総称し「2045年問題」といいます。人間の仕事が無くなる。働かなくていい社会がやって来る。とかとか色々な問題や可能性があますが、最も懸念されているのが『AIが自ら意思を持つ』という危惧です。今のまま無秩序に研究が進められ、善悪の認識も無いままある日AIが人間の知能を超えて自我を持った時、どんな行動を起こすのか。最悪はターミネーターの世界です。
それにひとつの答えになるかも知れない研究をされているのが理工学部インテリジェント情報工学科の土屋誠司教授です。
土屋教授は、「AIが言っているから正しいというわけではない、というところに自覚的であってほしいと思います。そうでないと、『AIに支配される』ことが現実味を帯びてくるでしょう」
「技術は、それを生み出した開発者の思いがどうであれ、使い方次第で、希望にも脅威にもなり得る。技術革新が目覚ましい今の時代、『良心教育』を掲げる同志社大学の存在が大きな価値を持つ。」とも仰っておられます。

以下は、ONE PURPOSE 2023夏号 研究の最前線「『常識』を持ったAIを創りたい」の抜粋です。

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その行方が不透明な中、理工学部インテリジェント情報工学科の土屋誠司教授は、「AIは今が学び時」と言い切る。「当たり前の技術になり、AIという言葉をあえて強調して使うことはなくなるでしょう。教養として、もう知っておかないといけない時代なんです」。そう語る土屋教授が、人間との共存を目指して研究しているのが 、「 『 常識 』を 持ったAIの実用化」だ。
土屋教授の専門は自然言語処理。人間が日常的に使う言葉を統計的に解析できる数値に変換することで、コンピューターが理解できる形にする深層学習分野の一つだ。言葉から相手がどんな感情を抱いているかを読み取る「感情予測」がメインテーマで、研究室では一つの単語の意味を複数の単語で表現することで、コンピューターが人間のように〝連想〞できるメカニズムを構築している。これを使って、言葉が使われるシーン、発話者の性別や年齢層、地域や時代などを加味した「常識的な」対話ができるシステムを開発しようとしている。
「AIが言っているから正しいというわけではない、というところに自覚的であってほしいと思います。そうでないと、『AIに支配される』ことが現実味を帯びてくるでしょう」と土屋教授。人間が主体となって使うツールとして、良さも怖さも正しく理解してもらおうと、講演やセミナーの開催、年齢層に合わせた解説書の出版と、一般向けの啓発活動にも力を入れている。「AIに正確に指示する上では、国語力も重要です。人間同士のコミュニケーションに求められているものは、AIの世界でもやっぱり求められるんです。また、AIが人間の仕事をやってくれるようになった時、生きがいをどう見つけるか。心豊かに生きるためにどうしたいか。そんなことも今後、一人ひとりに問われてくると思います」
技術は、それを生み出した開発者の思いがどうであれ、使い方次第で、希望にも脅威にもなり得る。技術革新が目覚ましい今の時代、「良心教育」を掲げる同志社大学の存在が大きな価値を持つと土屋教授は考える。
「ロケットを飛ばす技術は、横に飛ばせばミサイルになる。特に理系の学生は、それぐらい危険な技術、最先端の技術を扱っているんだと自覚し、根底にしっかりと良心を持って行動できる人であってほしい。そしてそれをグローバルにもローカルにも活用でき、リーダーとしてダメなことはダメだと発言できる人として活躍してくれたらと願っています。同志社大学には150年の歴史の中で受け継がれてきた良い伝統があり、社会で高い評価を受けています。さらに150年先も伝統として残していけるよう、私も教育者として、そこは大事に育てていきたいと思っています」

[プロフィール]
理工学部インテリジェント情報工学科
人工知能工学研究センター長
土屋誠司教授

2000年 同志社大学工学部知識工学科卒業
2002年 同志社大学大学院工学研究科博士前期課程修了。三洋電機研究開発本部に勤務
2007年 同志社大学院博士課程修了
2007年 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部教授
2009年 同志社大学理工学部Faculty of Sience and Engineering 助教
2011年 同 准教授
2017年 同 教授
2018年 人工知能工学研究センター センター長

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文責:HP担当 藤原

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