ONE PURPOSE 2023 春号(vol.209)「研究の最前線」

Posted by on 4月 30, 2023 in 編集後記
ONE PURPOSE 2023 春号(vol.209)「研究の最前線」

※GAHAG.net(フリー画像写真集)

角膜の透明を保つために欠かせないのが角膜内皮。
これが病気などで傷んでしまうと、角膜は白く濁り視力が低下してしまうが、今の治療法は角膜移植のみと生命医科学部の奥村教授は言う。ところが、世界的にドナー角膜が不足、世界では70人に1人しか移植を受けることができない。
奥村直毅教授、小泉範子教授を中心とする研究グループは再生医療と点眼薬の研究を重ね、角膜内皮疾患の新規治療法の開発・研究が、眼科治療の未来を変えるかもしれない大きな成果を挙げている。

①ドナー角膜から角膜内皮細胞を大量に培養し増やすことに成功。動物を使った研究で培養した細胞を『ROCK阻害剤』という薬剤とともに眼に注射することで角膜内皮を再生できることを発見。
②角膜移植を受けた患者の角膜内皮から、病気の性質を持った細胞を培養し研究、世界の角膜移植の40%を占める疾患、『フックス角膜内皮ジストロフィ』に対し、『シロリムス』という薬が治療薬の候補であることを発見。
既に米国で治験を進めていて安全性と有効性が証明されたら世界初となる角膜内皮ジストロフィの治療薬が世に出ることになる。

奥村教授らは「これらの成果を製品化することで、失明など重い視力障害で困っている患者さんを救いたい」との思いから、2018年に同志社大学発のスタートアップ『アクチュアライズ』を起業。
「大学での研究成果を大企業に引き継ぎ、実用化してもらうことも1つの方法ですが、大学の研究者が起業する大学発スタートアップにより実用化を目指すことは世界的に非常に一般的。
自分たちの手で開発をスピーディーに進め、より確実に患者さんに届けるためには起業が近道だと判断しました」と起業の理由を語っています。
大学からは同志社の温かさや良い部分を最大限に活かしたスタートアップ支援があったとのことで、
奥村教授は「大学は社会に出た時に、お金を稼ぐ術を学ぶところでもあります。学位のための研究に留まらず、社会を良いものにするための研究を行なって、実際に製品として社会に送り出すということに関われることはまたとないチャンスのはずです。
"どんどん行こう"と学生に話しています。"私立大学の雄"として、十分に世界で戦えると確信しています。」
また、誌面では「スタートアップはリスクも高いですが、社会を前進させる不可欠な存在です。国も過去最大規模の予算を費やしてスタートアップ支援を始めています。
スタートアップは怪しいという時代錯誤な認識ではなく、社会の発展の原動力だという当たり前の認識を持ってもらいたいです。
大学を卒業して大企業に就職することも選択肢の一つですし、スタートアップにチャレンジしてみることも全く合理的な選択肢だと思います。
大企業に就職したから一生安泰というわけは無く、大企業への就職だろうが自らの起業であろうが、学生には人から笑われるくらい大きな夢を持って突き進んで欲しいと思います。」とも語られていました。

[Profile]

生命医科学部 奥村直樹教授(眼科医)

2001年、京都府立医科大学卒業
2001年、京都府立医科大学医学部附属病院 研修医(至2003年)
2003年、町田病院 医員(至2006年)
2006年、京都府立医科大学大学院博士課程(至2010年)
2010年、京都府立医科大学 病院助教授(至2011年)
2011年、同志社大学 助教授
2015年、同志社大学 生命医科学部医工学科 准教授
2018年、同志社大学発スタートアップ『アクチュアライズ』起業
2020年、同志社大学 大学院生命医科学研究科 教授(現任)
2020年、京都府立医科大学 眼科学教室 客員教授(現任)

生命医科学部 小泉範子教授(眼科医)

1994年、京都府立医科大学卒業
1994年、同大学附属病院研修医
2000年、ドイツケルン大学眼科 フンボルト財団博士研究員(至2003年)
2003年、同志社大学 再生医療研究センター助教授
2007年、京都府立医科大学医学部 客員講師(至2010年)
2008年、同志社大学生命医科学部医工学科准教授
2009年、京都大学医学部臨床准教授
2010年、同志社大学生命医科学部医工学科教授(現任)
2010年、京都府立医科大学医学部 客員教授(現任)
2010年、滋賀医科大学医学部客員教授(至2020年)
2014年、同志社大学先端医工学研究センター センター長(兼任)
2015年、京都大学医学部 臨床教授(現任)
2016年、同志社大学 大学評議員(至2020年)

アクチュアライズ株式会社 (actualeyes.co.jp)

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文責:HP担当 藤原
mailto:info@okinawa.doshisha-alumni.org

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