SDGsを考える 『同志社ミツバチラボ』

SDGsを考える 『同志社ミツバチラボ』

同志社大学烏丸キャンパスの屋上に養蜂場。政策学部総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション(社会変革)コース服部篤子教授の研究室が主宰する養蜂プロジェクトです。
意識から行動への変革を促すためのフィールドワークの一環としての都市養蜂の取組みで、15年前、銀座のビルの屋上で養蜂に取組んでいる「銀座ミツバチプロジェクト」との出会いがきっかけ。
『社会をより良い方向へと変革するには、人々の意識変容と行動変容が必要です。様々な社会問題が顕在化し、国連がSDGsを採択したことで社会の意識は大きく変わってきましたが、行動変容にまではなかなか至っていないのが現状ではないでしょうか。頭で理解したことをアクションにつなげるには、フィールドワークで主体的に学ぶ姿勢を身につけることが大切。その一つとして都市養蜂に取組んでいます』と服部教授は説明されています。
人にとって、ミツバチは危険な虫ではなく、むしろ様々な恩恵や気づきを与えてくれる共存していくべき虫である。そんな理解が進み、奇想天外な“大都会での養蜂”は、地域の緑化推進へと、人々の行動変容も促していた。楽しみながら意識変容から行動変容へと人を促すソーシャル・イノベーションの理想型のひとつではないか。
そして、2019年に院生の協力を得て『同志社ミツバチラボ』をスタート。小さなミツバチにとっては、プランターの花も十分な蜜源となり、むしろ街中の方が農薬使う農村地帯よりも生息し易い面もあるとのこと。
『春には桜、秋にはセイタカアワダチソウからも蜜を採取し、季節によって蜂蜜の色が変わるのも興味深い発見だった。量は少ないながら順調に蜂蜜を採取でき、コロナ禍前には地域の親子向けに蜂蜜採取体験を開くこともできた』と服部教授。
『1匹のハチは弱い存在でも、その集団が作る巣の構造は高い強度を誇る六角形。弱いからこそ強くして持続可能にしようということをハチたちは人間よりも早くしてきたわけです。そこからダイバーシティについて考えたり、働きバチがすべて雌であることからジェンダー論議になったり、養蜂を通じて院生たちは様々な気付きを得ています』と手応えを語られています。
具体的なアクションとして蜜蝋で作ったロウソクと蜂蜜をセットにした防災グッズも検討中とのこと。
ソーシャル・イノベーションもSDGsも経済的に持続可能なプランを示して周囲の賛同、協力を得ることが不可欠。
『2030年をどんな社会にしたいのか、ビジョンを描いて働きかければ協力してくれる企業や自治体もあるはず。意欲のある学生を、大学も学部の垣根を越えて応援します。失敗を重ねながら、アウトプットの経験を積み上げてほしい』と服部教授は語られています。
ソーシャル・イノベーションの本質は、様々な組み合わせや連携によって新しい価値を創造していくこと、地域を動かしていく社会起業家が同志社ミツバチラボから生まれることを期待している。と記事は締め括っています。

記事は、同志社大学通信「One Purpose」2022 Sring|vol.206『養蜂から見る都市デザイン』よりの抜粋です。

☐☐☐ 言葉解説 ☐☐☐

「同志社ミツバチラボ」・・・2019年5月15日、銀座ミツバチプロジェクトから1群を分けて頂き総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーションコースの有志と世界にネットワークをもつ創業支援のインパクトハブ京都とともに開始した、養蜂を通じたコミュニティ創発の社会実験。巣箱は烏丸キャンパスの屋上。
①地域コミュニティの創発
②そのエリアの社会課題の探索
③伝統と革新手法によるヴィジョンの策定
④問題解決のアイデア試行
⑤成果を見える化する評価、そして実装へと、社会問題開発手法のプロセスを共有することを意図しています。
(同志社ミツバチラボホームページより)

「銀座ミツバチプロジェクト」・・・2006年春、銀座で働く有志たちが集まり始動。蜂蜜採取体験や出前授業での食育や環境教育を実施するとともに、蜂蜜のブランド商品化による事業の収益化を図っているNPO法人。そのホームページには、ビジョンとして「人と自然を“つなぐ”ミツバチからいただく恵みははちみつだけではありません。実り、命のつながり、生きものとの共生、そして人と人とのつながり。ミツバチとその恵みを大切に地域に根ざした循環型社会を目指します。」とあります。

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文責:HP担当 藤原

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